
01 / WHY NOW
会議は減らないのに、記録に使える時間は増えない。多くの事業所で起きているのはこの状態です。
令和8(2026)年8月27日、厚生労働省の第62回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で、令和9年度報酬改定に向けた「主な論点(案)」が示されました。そのなかには、人材確保の取組と併せて「介護テクノロジーの活用など、当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上の取組を推進するための方策」を検討する、という記載があります。障害児支援の分野では「チーム支援の推進」も検討事項に挙げられています。
ただしこれは論点(案)であり、AIやICTの導入が報酬上どう評価されるかが決まったわけではありません。資料にも「今後議論を進めていく中で変更することがあり得る」と注記されています。
出典:厚生労働省 第62回『障害福祉サービス等報酬改定検討チーム』(令和8年8月27日)資料2『令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)』。本記事は更新日時点の情報です。最新・正確な内容は厚生労働省の原典をご確認ください。
介護分野の記載の出典:厚生労働省「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会 中間とりまとめ(令和7年4月)
なお、介護分野では、厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する検討会」の中間とりまとめ(2025年4月公表)に、介護事業者が作成する計画書やサービス担当者会議等の議事録について、生成AIの技術を活用して原案を作成することも業務効率化に資する、と記載されています。同時に、AIの信頼性やセキュリティ等の課題があるため、実証を通じて効果や利用における留意点を明らかにしていくことが重要である、とも書かれています。これは介護分野の議論であり、障がい福祉の会議記録について生成AIの利用が制度上認められたことを意味するものではありません。
制度の話はここまでです。この記事では、制度がどう動いても手元でできる「議事録の下書きをAIに任せる」やり方を整理します。
02 / WORK
議事録づくりを工程に分けると、時間を食っているのは「書くこと」そのものではありません。
| 工程 | 中身 | AIに任せられるか |
|---|---|---|
| 1. 記録を取る | 会議中のメモ・走り書き | 人(AIは使わない前提で整理) |
| 2. 整文する | 話し言葉を書き言葉に直す | 任せられる(下書きまで) |
| 3. 構造化する | 決定事項・宿題・保留を分ける | 任せられる(下書きまで) |
| 4. 抜けを探す | 誰が・いつまでにが空欄の項目を洗う | 任せられる(指摘まで) |
| 5. 事実を確認する | 発言の意味・数字・日付が合っているか | 人 |
| 6. 確定する | 記録として残す・共有する | 人 |
AIが担うのは2〜4の下書き・補助までです。5と6は人が行い、最終責任は作成者にあります。
とくに5は重要です。AIは、メモに書かれていないことを文脈から補って自然な文章にしてしまうことがあります。読んで意味が通るかどうかではなく、メモに書いてあるかどうかで確認してください。
03 / TYPES
以下はすべて架空の事例です。実在の利用者情報は使いません(理由は04で説明します)。
会議中の断片的なメモを、読める形に整えるだけの使い方です。いちばん失敗が少なく、最初に試すならここからです。
指示文の例
「メモにない内容は補わない」「推測は(要確認)と書く」の2行が要です。これを入れないと、それらしい文章が返ってきて、確認の手間がかえって増えます。
すでに文字にはなっているが長い、というときの使い方です。読み返す時間を減らします。
指示文の例
「担当未定」「期限未定」を明記させるのがポイントです。議事録で後から困るのは、決定事項そのものより「誰がやるか書いていない」ことだからです。
議事録ではありませんが、結果的に議事録づくりを軽くする使い方です。会議前に論点を出しておくと、当日のメモが構造化され、後の整文が楽になります。
指示文の例
04 / RULES
福祉の会議記録には、障がいがある事実、病歴、診療情報など、要配慮個人情報にあたる情報が含まれることがあります。原則として生成AIに入力せず、練習や手順づくりは架空の事例(仮想ケース)で行ってください。
実務で個人情報を入力する場合は、法人の承認だけでなく、利用目的の範囲、本人同意や第三者提供規制の適用、サービス提供者による入力情報の取り扱い、利用規約・プライバシーポリシー、安全管理措置を確認し、法人が定めた環境と手続きに従ってください。
「氏名を伏せれば大丈夫」とは言えません。事業所名・日付・障がい特性・地域が揃えば個人が特定され得ます。
録音や自動文字起こしを使うかどうかは、AIで整文するかどうかとは別の判断です。出席者への説明と同意、録音データの保存場所と保存期間、削除の手順を先に決めてください。決まっていないなら、まずは型1(手書きメモの整文)から始めるのが安全です。
AIの下書きをそのまま議事録にしません。誰が、どのメモ(原本)と突き合わせて確定するかを先に決めます。原本は捨てず、確定するまで残してください。
会議記録の様式や保存期間は、運営基準や指定権者(自治体)の運用によって異なる場合があります。AIで作れるのは中身の下書きまでで、どの様式に、どれだけ残すかは所管自治体の最新の案内をご確認ください。
「下書きはAIと。判断と支援は、人が。」
05 / START
定着させるには、AIの精度だけでなく、うまくいった指示文と確認手順を事業所内で共有することが欠かせません。個人の工夫で終わらせず、次の担当者が同じ手順で再現できる状態にしてください。
WelvieAIは、障がい福祉に特化したAI研修です。2ヶ月・2時間×全8回=計16時間(完全オンライン)で、仮想モデル事業所のケース演習を通じて、受講者自身がAIへの指示・確認・運用ルールと業務改善の「型」を設計できるようになることを目指します。
プログラミング(コード開発)を扱うものではなく、株式会社フェアテクノロジーズが貴社専用ツールを制作・納品するものでもありません。母体の動画研修「ウェルビーラーニング」は全国1,000社・のべ20,000名以上が利用。グループで就労継続支援A型事業所・グループホームを運営しています。
障がい福祉に特化したAI研修「WelvieAI」の資料をご覧いただけます。
06 / SUMMARY
議事録づくりで時間がかかるのは「書くこと」ではなく、整文・構造化・抜けの洗い出しです。この3工程はAIに下書きを任せられます。
はじめは、走り書きメモの整文(型1)から。指示文には「メモにない内容は補わない」「推測は(要確認)と書く」を必ず入れてください。実在の利用者情報は入れず、架空の事例で手順を固めます。事実の確認と記録の確定は人が行い、最終責任は作成者にあります。
本記事は公開日時点の情報に基づきます。制度・各サービスの仕様は変更される場合があります。会議記録の様式・保存期間は所管自治体の運用に従ってください。個人情報(特に要配慮個人情報)の取り扱いは、個人情報保護法および事業所の規程に従ってください。
07 / FAQ
いいえ。AIが担うのは下書き・補助までです。メモ(原本)との突き合わせ、内容の確認と確定は担当者が行い、最終責任は作成者にあります。
録音するかどうかは、AIを使うかどうかとは別に判断してください。出席者への説明と同意、録音データの保存場所・保存期間・削除手順を先に決める必要があります。決まっていない場合は、手書きメモの整文から始めるのが安全です。
氏名を伏せただけでは十分とは言えません。事業所名・日付・障がい特性・地域などが揃うと個人が特定され得ます。練習は架空の事例で行い、実務で個人情報を入力する場合は法人が定めた環境と手続きに従ってください。
起こり得ます。指示文に「メモにない内容は補わない」「推測が必要な箇所は(要確認)と書く」を入れ、確認は「読んで意味が通るか」ではなく「メモに書いてあるか」で行ってください。
参加者が固定で、様式が決まっていて、やり直しがきく会議からです。個別支援計画の確定にかかわる会議は、手順が安定してから検討してください。
運営基準や指定権者(自治体)の運用によって異なる場合があります。所管自治体の最新の案内をご確認ください。
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この記事を書いた人
杉本 悠飛(すぎもと ゆうひ)
株式会社フェアテクノロジーズ 取締役 / ウェルビーラーニング事業責任者
就労継続支援A型事業所「テクキャリ」 取締役
障がい福祉に特化した動画研修サービス「ウェルビーラーニング」を立ち上げ、累計1,000社以上の事業者・のべ20,000名以上の受講を支援。自社グループでは就労継続支援A型事業所「テクキャリ」の運営に取締役として携わり、制度対応と現場運営の両方を実務として経験しています。虐待防止・身体拘束適正化・処遇改善加算・運営指導対策などの研修コンテンツ企画を統括。2026年からは障がい福祉特化のAI研修「WelvieAI(ウェルビーAI)」の立ち上げも担当しています。