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障がい福祉事業所のAI利用ガイドラインの作り方10項目のたたき台と、決めておくと迷わない3つの線引き

event2026年9月7日 公開schedule約8分で読めます
障がい福祉事業所のAI利用ガイドラインの作り方

01 / WHY NOW

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なぜ今、AI利用のルールなのか

生成AIの利用を検討する事業所では、「どこまで使ってよいか」を決めないまま、利用範囲を職員個人の判断に委ねてしまう場合があります。ルールがないと職員ごとに線引きが変わり、いちばん困るのは現場です。

いま整えておきたい理由は3つあります。

出典:内閣府「AI法 全面施行 -次なるフェーズへ-」総務省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版・令和8年3月31日)厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
本記事は更新日時点の情報です。制度・ガイドラインは改定されることがあるため、最新・正確な内容は原典をご確認ください。

02 / MINDSET

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「禁止リスト」ではなく「安心して使える範囲」の宣言

避けたいのは、禁止事項だけを並べた紙を配ってしまうことです。禁止事項だけを並べると、職員が利用可能な範囲を判断しにくくなることがあります。

ガイドラインの役割は逆です。「ここまでは使ってよい」と書いてあるから、安心して使える。 禁止と許可をセットで書くのが、いちばん最初のコツです。

03 / FRAMEWORK

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国のガイドラインが「AI利用者」に示している重要事項

社内ルールをゼロから考える必要はありません。「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIに関わる主体をAI開発者・AI提供者・AI利用者の3つに分け、事業所のようにできあがったAIサービスを業務で使う立場=AI利用者にとって重要となる事項を整理しています。

なお、AI事業者ガイドラインは、AI利用者に一律の法的義務を直接課すものではありません。ただし、個人情報保護法、契約、労働関係法令等による義務は別途適用されます。

以下は、原典の表1のうち「AI利用者」欄に個別の重要事項が記載されている行を抜粋したものです(番号・ローマ数字は読みやすさのため省略しています)。

共通の指針AI利用者に重要となる事項
安全性安全を考慮した適正利用
公平性入力データ又はプロンプトに含まれるバイアスへの配慮
プライバシー保護個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策
セキュリティ確保セキュリティ対策の実施
透明性関連するステークホルダーへの情報提供
アカウンタビリティ関連するステークホルダーへの説明/提供された文書の活用及び規約の遵守

このほか、共通の指針には「人間中心」「教育・リテラシー」なども含まれます。事業所のルールは、この項目立てをそのまま借りて作るのがいちばん早い、というのが本記事の考え方です。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)表1「『共通の指針』に加えて主体毎に重要となる事項」

04 / TEMPLATE

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たたき台にできる 10項目の記載例

以下は、A4で1枚に収まる分量を想定した検討項目を整理するための一般的な記載例であり、完成済みの社内規程や個別法人向けの法律文書ではありません。当社は規程作成の代行、個別の労務・法律判断は行いません。

実際に採用する際は、既存規程、雇用・委託関係、利用ツールの契約条件等と照合し、必要に応じて弁護士・社会保険労務士等へご確認ください。〔 〕の部分は自事業所の実態に置き換えてお使いください。

1. 目的と適用範囲

本ルールは、〔法人名〕の職員が業務において生成AIを利用する際の取扱いを定める。対象は、常勤・非常勤の職員および、派遣契約・業務委託契約等に基づき本ルールを適用することとした関係者とし、〔事業所名〕の全サービスに適用する。派遣労働者等への適用・周知方法は、契約および派遣元等との役割分担を確認する。

2. 使ってよいツールとアカウント

業務で利用してよい生成AIは〔ツール名〕とし、法人が用意したアカウントを用いる。個人のアカウント・無料枠の業務利用は行わない。新たなツールを使いたい場合は、〔管理者〕に事前に相談する。

3. 入力してよい情報・してはいけない情報

入力しない: 利用者・ご家族の氏名、住所、生年月日、受給者証番号、障がいの内容や診断名、支援記録の原文、写真、職員の個人情報、契約先の非公開情報。
入力してよい: 実在の個人を識別できず、利用者・ご家族・職員の個人情報、要配慮個人情報、法人・契約先の秘密情報、第三者の著作物等を含まない一般的な内容。実在の事例を題材にする場合は、氏名を伏せるだけでなく、個別事例との対応関係が残らない仮想ケースへ置き換える。判断に迷う情報は入力しない。
※特定の利用者等を識別できる形で、その人の身体障がい・知的障がい・精神障がい、診断・治療等に関する事実を含む情報は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当し得る。本ルールでは、利用者・ご家族に関する個人情報および要配慮個人情報は生成AIへ入力しない運用を原則とする。

4. 使ってよい業務・使わない業務

使ってよい(下書き・整理まで): 文章の下書き、要約、言い換え、表現のチェック、会議のたたき台づくり、研修資料の骨子づくり。
使わない: 支援方針や計画内容の決定、利用者・ご家族への回答の確定、記録の確定、制度・加算の可否判断、人事評価に関する判断。

5. 出力の確認ルール(最終判断は人)

AIの出力は下書きであり、結論ではない。確定前に〔役職・担当者〕が内容を確認し、一次情報と照合する。最終判断は人が行い、法人が定める職務権限・承認手続・責任体制に従って確定する。AIを利用したことによって、法人や各担当者が本来負う責任が免除されるものではない。

6. 誤りや偏りへの注意

AIは事実と異なる内容を、もっともらしい文章で出力することがある。制度・法令・加算に関する記述は、必ず一次情報(厚生労働省・自治体の通知等)で確認する。指示文(プロンプト)の書き方によって出力が偏ることがある点にも留意する。

7. 利用規約と設定の遵守

学習利用をオフにする設定は、個人情報等の入力を許可するものではない。 〔管理者〕は、利用規約・プライバシーポリシー、入力データの利用目的、保存期間、削除方法、第三者提供・国外での取扱い、アクセス権限等を確認し、承認済みツールと入力可能な情報を定める。利用者・ご家族・職員の個人情報および法人の秘密情報は、学習設定にかかわらず原則として入力しない

8. 記録と説明

AIを利用して作成した文書について、求められたときに「どこまでAIで、どこから人か」を説明できる状態にしておく。〔記録様式・運用〕。

9. 教育と見直し

本ルールは職員に周知し、少なくとも〔年1回〕見直す。加えて、利用サービス・利用規約・データ取扱いの変更、新機能の導入、事故・ヒヤリハット、法令・ガイドラインの改正があった場合は随時見直す。新任職員には入職時に説明する。運用して困った点は〔管理者〕に共有し、見直しに反映する。

10. 事故・誤入力時の対応

個人情報や秘密情報を誤って入力した場合は、直ちに利用を中止し、〔管理者・窓口〕へ報告する。自己判断で履歴削除だけを行って終了せず、法人の個人情報保護・情報セキュリティ事故対応手順に従う。報告を受けた〔管理者〕は、事実確認のうえ、本人通知や所管機関への報告の要否を判断する(判断に迷う場合は専門家・所管機関に相談する)。

05 / RULES

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決めておくと迷わない、3つの線引き

10項目のうち、現場で判断が割れやすいのは次の3つです。ここだけでも先に決めておくと、日々の判断を揃えやすくなります。

線引き1|入れてよい情報

現場で迷いやすい論点の一つが「名前を伏せれば入れてよいのか」です。氏名を消しても、地域・年齢・障がいの内容・利用日といった情報を組み合わせれば個人が特定され得ます。 「一部を伏せる」ではなく、仮想ケースへ置き換えるか、そもそも個別ケースを入力しないという決め方のほうが、現場で迷いません。

線引き2|任せる範囲

「AIに任せてよいのは、どこまでか」。判断の軸はシンプルで、間違えたときに利用者に不利益が及ぶかどうかです。文章の言い換えや要約は、間違えても人が直せます。支援方針の決定や、ご家族への回答の確定は、間違いがそのまま影響します。

下書きはAIと。判断と支援は、人が。 この一文をルールの冒頭に置いておくと、細かいケースの判断がぶれにくくなります。

線引き3|確認する人

「誰が確認するか」を役職で決めておくことです。「作った人が確認する」だと、忙しいときに形骸化します。文書の種類ごとに確認者を決める(例:外部に出す文書は管理者、内部の下書きは作成者本人)ほうが、実態に合います。

「下書きはAIと。判断と支援は、人が。」

06 / START

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運用の始め方(1枚 → 周知 → 見直し)

WelvieAIは、障がい福祉に特化したAI研修です。2ヶ月・2時間×全8回=計16時間(完全オンライン)で、仮想モデル事業所のケース演習を通じて、受講者自身がAIへの指示・確認・運用ルールと業務改善の「型」を設計できるようになることを目指します。

プログラミング(コード開発)を扱うものではなく、株式会社フェアテクノロジーズが貴社専用ツールを制作・納品するものでもありません。母体の動画研修「ウェルビーラーニング」は全国1,000社・のべ20,000名以上が利用。グループで就労継続支援A型事業所・グループホームを運営しています。

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07 / SUMMARY

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まとめ

AI利用のルールは、禁止するためではなく、安心して使うためにあります。国の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」が示すAI利用者向けの項目立てを借りれば、ゼロから考える必要はありません。

まずはA4で1枚。10項目のうち、入れてよい情報・任せる範囲・確認する人の3つだけでも決まっていれば、現場の迷いを減らす助けになります。下書きはAIと。判断と支援は、人が。

免責

本記事は2026年9月4日時点で公表されている情報に基づく一般的な整理であり、特定の事業所における法令適合性を保証するものではありません。個人情報保護法・労働関係法令の適用や、社内規程としての位置づけ・記載内容については、所管の行政機関または社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。制度・ガイドラインは改定されることがあるため、最新の一次情報をご確認ください。

08 / FAQ

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よくある質問

小さな事業所でも、ルールは必要ですか?expand_more

小規模な事業所でも、職員間で判断が分かれる可能性があります。簡潔なルールは、判断基準を共有する手段の一つになります。

学習に使われない設定にすれば、利用者情報を入れてよいですか?expand_more

本記事では推奨していません。学習利用をオフにする設定は、個人情報等の入力を許可するものではありません。設定は変更される可能性があり、確認の責任も事業所側に残ります。個別の判断は、法人の個人情報保護方針や専門家の助言に沿ってご検討ください。

ルールを作れば、AIの出力をそのまま使ってよくなりますか?expand_more

なりません。AIの出力は下書きであり、確定は人が行うという前提は変わりません。ルールを整えても、法人や各担当者が本来負う責任が免除されるわけではありません。

就業規則に入れる必要がありますか?expand_more

位置づけ(内規・付属文書・規程本体のいずれにするか)は法人の規程体系によって異なります。就業規則との関係については、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

記載例をそのまま社内規程として使ってよいですか?expand_more

本記事の記載例は、検討項目を整理するための一般的なたたき台であり、完成済みの社内規程や個別法人向けの法律文書ではありません。当社は規程作成の代行や個別の労務・法律判断は行いません。採用の際は既存規程・契約条件と照合し、必要に応じて専門家にご確認ください。

AI事業者ガイドラインに従わないと罰則がありますか?expand_more

AI事業者ガイドラインは、AI利用者に一律の法的義務を直接課すものではありません。ただし、個人情報保護法、契約、労働関係法令等による義務は別途適用されます。

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この記事を書いた人

杉本 悠飛(すぎもと ゆうひ)

株式会社フェアテクノロジーズ 取締役 / ウェルビーラーニング事業責任者 / WelvieAI事業責任者
就労継続支援A型事業所「テクキャリ」 取締役

障がい福祉に特化した動画研修サービス「ウェルビーラーニング」を立ち上げ、累計1,000社以上の事業者・のべ20,000名以上の受講を支援。自社グループでは就労継続支援A型事業所「テクキャリ」の運営に取締役として携わり、制度対応と現場運営の両方を実務として経験しています。虐待防止・身体拘束適正化・処遇改善加算・運営指導対策などの研修コンテンツ企画を統括。2026年からは障がい福祉特化のAI研修「WelvieAI(ウェルビーAI)」の立ち上げも担当しています。