
令和8年6月から、処遇改善加算の賃金改善の対象が「福祉・介護職員」から「障害福祉従事者」へ幅広く拡大されました※1。この対象拡大に伴い、事業所の配分方針や職員構成によっては、賃金改善計画の確認、職員への説明、周知文書、集計、実績報告の準備——加算をめぐる事務が増える場合があります。
この記事では、その増えた事務のうち「判断を伴わない準備作業」をAIで軽くする5つの型と、逆にAIに任せてはいけない線引きを整理します。制度そのものの解説ではなく、あくまで事務のやり方の話です。制度の適用可否は指定権者(自治体)や専門家にご確認ください。
この記事でわかること
先に結論
AIに任せるのは「書類を作る前の準備」まで。要点の整理、説明文の下書き、確認観点の洗い出しが向いています。届出書・実績報告書そのものをAIの出力のまま使うことは避けてください。
実在する職員の氏名・賃金額は入力しない。配分ルールの検討も職員説明文の下書きも、架空の職員区分と仮の数値で十分に練習できます。
制度の要件判断はAIの守備範囲外。加算区分・対象職種・様式・期限は、告示や通知、指定権者の最新の案内で人が確認します。AIの出力に制度の記述が混ざっていたら、必ず一次情報と突き合わせてください。
01 / BACKGROUND
令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)により、令和8年6月1日から、処遇改善加算の賃金改善の対象が「福祉・介護職員」から「障害福祉従事者」へ幅広く拡大されました※1。厚生労働省の資料では、直接支援を担う職員に限らず、事業所で働く幅広い職員を対象に賃上げを進める趣旨が示されています。
個別の職種や兼務者、法人本部の職員をどう扱うかは、告示・留意事項通知・Q&Aおよび指定権者(自治体)の案内で確認が必要な論点です。ここでは制度の中身には踏み込みませんが、対象とする職員が増える場合には、事業所の配分方針や既存の管理方法によって、説明・集計・記録の作業が増える可能性があります。
| 増えやすい作業 | なぜ増えるのか |
|---|---|
| 職員への説明・周知 | これまで対象外だった職員にも、賃金改善の考え方を説明する必要が生じる |
| 配分ルールの整理と文書化 | 職種が増えるほど「なぜこの配分なのか」を筋道立てて示す必要が高まる |
| 集計・突合の手間 | 対象者リストが広がり、給与システムや勤怠のデータとの突合が増える |
| 記録・実績報告の準備 | 後日の実績報告に備え、根拠となる資料を整理しておく必要がある |
この4つはいずれも、制度の判断そのものではなく「文章を書く」「情報を整理する」作業です。だからこそ、生成AIとの相性がよい領域だといえます。
※1 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し・令和8年6月施行)。根拠は、こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(令和8年3月31日公布)、厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」、および同改定Q&A(VOL.1・VOL.2)です。最新の告示・通知・Q&Aは厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」をご確認ください。本記事は2026年8月28日時点の公表情報に基づく一般的な情報提供であり、個別事案の要件該当性を判断するものではありません。制度は変更・追加される場合があるため、実際の運用にあたっては最新の告示・通知・Q&Aおよび指定権者の案内をご確認ください。
02 / BOUNDARY
加算事務にAIを使うとき、最初に決めるべきは「どこまで任せるか」です。当社が研修でお伝えしている線引きは、次のとおりシンプルです。
| AIに任せてよい(下書き・整理) | 人が判断する(確定・提出) |
|---|---|
| 職員向け説明文・周知文書の下書き | 配分ルールそのものの決定 |
| 説明会用スライドの構成案・想定質問の洗い出し | 個別の職種・兼務者が対象になるかの判断 |
| 集計表に必要な項目・チェック観点の整理 | 実際の賃金額・配分額の確定 |
| 記載漏れを防ぐ自主点検リストのたたき台づくり | 届出書・実績報告書の記載内容と提出 |
| 用語をやさしく言い換えた説明の作成 | 制度解釈・要件該当性(指定権者・専門家に確認) |
境界線は「間違えたときに誰が責任を負うか」で引くとわかりやすくなります。責任が事業所側にある成果物ほど、AIは下書きまでにとどめ、確認と確定は人が行います。下書きはAIと。判断と支援は、人が。——これは記録業務でも加算事務でも変わりません。
提出書類の作成代行・要件判断は行いません。当社は、処遇改善加算の届出書・実績報告書の作成代行、提出代行、および個別事案の要件該当性に関する判断・助言を行いません。当社の提供範囲は、研修の実施、研修に関する書類(カリキュラム・見積書・出席記録・修了証)の発行、およびご希望に応じた連携社会保険労務士のご紹介までです。具体的な手続は、指定権者または当該手続を取り扱える専門家へご確認ください。
03 / 5 PATTERNS
いずれも実在する職員の情報は使わず、架空の職員区分と仮の数値で組み立てるのが前提です。出てきた文章は必ず読み直し、自事業所の実態に合わせて書き換えてください。
加算事務のなかでも、職員向け説明文の下書きは比較的試しやすい活用例です。「制度に詳しくない職員にも伝わる言葉で」と条件を添えるのがコツ。
説明会で聞かれそうな質問を先に洗い出しておくと、当日の負担が変わります。AIは、想定質問の候補を幅広く挙げる補助に使えます。ただし必要な質問がすべて含まれるとは限らないため、人が追加・確認してください。
数字そのものを計算させるのではなく、「どんな列が必要か」「どこで間違いやすいか」を設計させるのがポイントです。計算はこれまでどおり表計算ソフトで行い、値の正しさは人が確認します。
「何を揃えておくべきか」を自分たちの言葉でリスト化しておくと、後の確認作業が軽くなります。ただし、AIが出したリストの制度的な正しさは保証されません。指定権者が公表している点検表や手引きと必ず突き合わせ、AI出力はあくまで叩き台として使ってください。
自治体から届く案内や通知を読み解く時間も、加算事務の隠れたコストです。本文を貼り付けて要約させるのではなく、「どこを見ればよいかの観点」を先に作らせて、自分で読む使い方が安全です。要約させる場合も、要約結果は必ず原文と突き合わせてください。
なお、AIの出力に制度や数値の記述が含まれていた場合は、そのまま社内資料に転記せず、必ず一次情報(告示・通知・自治体の案内)と突き合わせてください。生成AIは、もっともらしい誤りを自信をもって書くことがあります。AI活用の全体像は「障がい福祉でAIは何ができる?業務別 活用ガイド」もあわせてご覧ください。
04 / RULES
加算事務が記録業務と違うのは、扱う情報が利用者ではなく職員の個人情報だという点です。職員の氏名や、氏名・職員番号その他の情報と結び付いて個人を識別できる賃金額・人事評価・勤怠等は個人情報にあたります。本記事では安全側の運用として、実在する職員を識別できる情報を生成AIに入力しないことを原則とします。
ルール1: 実在する職員を識別できる情報は入力しない。氏名はもちろん、「送迎担当の60代男性1名」のように、事業所の規模によっては個人が特定できてしまう記述にも注意が必要です。架空の職員区分(例:直接支援職A・事務職Bなど)と仮の数値で組み立ててください。
ルール2: 法人が承認したサービス・端末・アカウントだけを使う。承認にあたっては、入力情報の保存期間、AI学習への利用の有無、第三者提供・国外移転の有無、削除方法、アクセス制御などを利用規約・契約で確認してください。承認済みの環境であっても、実在する職員を識別できる情報は入力しないことを原則とします。給与に関わる情報を私物端末や未承認のアプリで扱わない——この一線を先に決めておくと、職員も迷いません。
ルール3: 制度の記述は必ず一次情報で確認する。AIが書いた加算区分・加算率・期限・様式名は、そのまま信じない。告示・通知・指定権者の案内と突き合わせ、最終的な記載は人が判断します。
個人情報とAIの関係をもう少し詳しく知りたい方は、「支援記録・ケース記録をAIで書く(音声入力→整文の3ステップと個人情報の注意点)」の注意点の章もご覧ください。考え方は職員情報でも同じです。
05 / HOW TO START
最初から全部を変えようとすると続きません。次の順番を参考に、まずは短時間で試せる範囲から始めてみてください。
この「投げる→直させる→人が確定する」という往復こそが、AI活用の実体です。効果の出方は事業所の規模・体制によって異なり、一律の短縮時間をお示しすることはできませんが、判断を伴わない準備作業からAIによる下書きを試すという進め方は、多くの事業所で検討しやすい方法です。ただし、法人の規程や情報管理体制に応じて利用範囲を定めてください(効果には個人差があります)。
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06 / SUMMARY
07 / FAQ
提出書類そのものをAIの出力のまま使うことは避けてください。AIに任せられるのは、様式に書く内容を整理するための下書き・要点の箇条書き・説明文の言い回しといった準備段階までです。様式の指定・記載方法・提出期限・個別事案の要件該当性は、指定権者(自治体)の最新の案内や社会保険労務士等の専門家にご確認のうえ、最終的な記載と提出は必ず人がご判断ください。
実在する職員の氏名・賃金額・人事評価などは個人情報にあたるため、生成AIに入力しないことを原則としてください。配分ルールの検討や説明文の下書きは、架空の職員区分と仮の数値で十分に練習できます。法人として承認した環境・手続の範囲内でのみ利用し、迷う情報は入力しない運用が安全です。
令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)により、令和8年6月1日から、賃金改善の対象が従来の福祉・介護職員から障害福祉従事者へ幅広く拡大されました(こども家庭庁・厚生労働省告示第5号、令和8年3月31日公布)。個別の職種・兼務者の取扱い、加算区分や加算率、届出の手続は、告示・留意事項通知・Q&Aおよび指定権者の案内でご確認ください。
効果は事業所の規模・体制・現在のやり方によって大きく異なるため、一律の短縮時間をお示しすることはできません。当社が研修でお伝えしているのは「下書きと整理はAIに、確認と判断は人に」という役割分担です。まずは職員向けの説明文や資料の下書きなど、判断を伴わない作業から試すことをおすすめします。
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